2025年、英国政府は Environmental Improvement Plan 2025(EIP 2025) などを通じて、UK REACH制度の運用をより迅速かつ効率的に行うための改革方針を示しました。 この中では、認可制度(Authorisation)や高懸念物質(SVHC)リストを含む化学物質管理の進め方について、優先順位付けを重視した運用改善を図る考え方が示されています。
この改革は、限られた行政資源を真にリスクの高い物質や用途に集中させ、制度の実効性を高めることを目的としています。
改革の背景
UK REACHは、EU離脱後も EU REACH を基盤とした枠組みを維持してきましたが、運用面では次のような課題が指摘されてきました。
- SVHC候補物質の増加に伴い、評価・管理対象が拡大している
- SVHC候補リストから認可リスト(Annex 14相当)への検討に時間を要する
- 制度上の対応が、必ずしも実際のリスク低減につながらない場合がある
こうした状況を踏まえ、英国政府および規制当局は、「形式的なリスト拡充」よりも「実効性を重視したリスク管理」へと制度運用を改善する必要性を示しています。
見直しの方向性
SVHCリストの位置付けの再整理
UK REACHにおいて、SVHC(Candidate List)は引き続き重要な警告・情報提供の役割を担いますが、 SVHCに指定された物質すべてが直ちに認可リスト検討の最優先対象となるわけではないとの考え方が示されています。 今後は、
- 物質の危険性の程度
- 実際の使用用途やばく露状況
- リスク低減につながる規制手段の適切性
といった要素を踏まえ、管理対応の優先順位付けを行う運用がより重視される見通しです。
認可制度(Authorisation)の運用改善
UK REACHでは、HSE(英国労働安全衛生庁)がSVHC候補物質の中から、認可対象として検討すべき物質を選定し、当局に推薦する仕組みが維持されています。 一方で、政府資料やHSEの作業計画では、
- 規制による実際のリスク低減効果
- 社会経済的影響
- 他の規制手段(制限措置等)との適切な役割分担
を踏まえたより戦略的な認可対象選定を行う必要性が示されています。 これは、認可制度そのものを否定するものではなく、リスク管理手段の一つとして、より効果的に活用する方向性と位置付けられます。
リスト更新プロセスの効率化と優先順位付け
UK HSEは、UK REACHの作業計画において、
- 科学的根拠
- 規制による実効性
- リソース配分の合理性
を考慮しながら、SVHC評価や認可対象推薦の優先順位付けを行う方針を示しています。これにより、評価・意思決定の透明性を高めつつ、制度運用の効率化を図ることが期待されています。
まとめ
英国のUK REACH改革は、化学物質管理をよりリスクベースかつ実務的に運用しようとする動きといえます。 今後は、リストへの掲載そのものよりも、科学的データに基づくリスク評価と用途別の管理判断が、より重視される見通しです。
そのため企業の実務面では、「SVHCに載ったかどうか」だけで判断するのではなく、どの用途・どのばく露経路がリスクとして重視されているかを把握することが重要になります。あわせて、用途別の含有状況やばく露評価、代替可能性を裏付けるデータを整理しておくことが、制度対応の基礎となります。
企業にとっては、制度動向を継続的に注視しつつ、自社製品や原材料に関する情報を整理し、変化に柔軟に対応できる体制を整えていくことが求められます。
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