2025年4月28日〜5月9日に開催されたストックホルム条約第12回締約国会議（COP12）において、Chlorpyrifos（クロルピリホス）、Medium-chain chlorinated paraffins（MCCPs）、および C9–21のLong-chain perfluorocarboxylic acids（LC‑PFCAs）、その塩および関連化合物を、新たに附属書A（廃絶）へ追加することが決定されました。
これを受けてEUは、条約決定を履行するため、POPs規則（Regulation (EU) 2019/1021）の附属書Iを改正する委任規則案を作成し、2025年11月21日に3件のパブリックコンサルテーションを開始しています。
EUにおける規制の方向性
欧州委員会のドラフト委任規則および公式説明によると、3物質群について以下の方向性が示されています。
規制目的
- Chlorpyrifos、MCCPs、C9–21 LC‑PFCAs（その塩・関連化合物）を、POPs規則附属書Iに追加し、規則第3条に基づきEU域内での製造、上市（輸入を含む）、使用を原則禁止することを目的としています
例外・特例
- COP12決定に従い、MCCPsおよびC9–21 LC‑PFCAsについては、条約上認められた特定の例外を反映した限定的な用途に関する特例が設けられる方向と説明されています
- Chlorpyrifosについては、条約附属書Aへの追加は「特定の例外なし」とされており、EU域内でも農薬・バイオサイドとして既に不承認であることから、ドラフト規則では特別な用途例外を設けない方針が示されています
手続・スケジュール
- 欧州委員会は2025年11月21日に3件のドラフト委任規則についてパブリックコンサルテーションを開始しており、意見提出期限は2025年12月19日と案内されています
- これらの委任規則は、ストックホルム条約の附属書改正がEUに対して発効する日に適用開始となるよう設計されると説明されており、採択後にEU官報で公表され発効する予定です（具体的な採択・公表日は現時点では最終決定前）
対象物質の概要
- Chlorpyrifos（クロルピリホス）
- 有機リン系の殺虫剤であり、EUでは植物防疫製品規則（Regulation (EC) No 1107/2009）および殺生物性製品規則（Regulation (EU) No 528/2012）の下で既に承認されていません
- ストックホルム条約COP12で附属書Aへの追加（特定の例外なし）が決定され、長期的な国際管理対象のPOPsと位置付けられました
- Medium-chain chlorinated paraffins（MCCPs）
- 主に炭素数C14–C17の塩素化パラフィン混合物であり、可塑剤、難燃剤、潤滑油添加剤等として工業用途に広く用いられてきました
- 難分解性や生物蓄積性、毒性が懸念され、COP12で附属書Aにspecific exemptions付きで追加されることが決定され、EUドラフトではこれをPOPs規則附属書Iに反映する提案となっています
- Long-chain perfluorocarboxylic acids (LC‑PFCAs)、その塩および関連化合物
- 一般に炭素数C9〜C21のペルフルオロカルボン酸、その塩および、これらに分解・変換され得る関連化合物を含む一群の物質を指し、撥水・撥油処理、コーティング、特殊用途材料などに利用されてきました
- 高い残留性および長距離輸送性が懸念され、COP12においてspecific exemptions付きで附属書Aに追加する決定がなされ、EUドラフトではPOPs規則附属書Iへの収載と、未然防止のための低い不純物限度値の設定が提案されています
まとめ
現時点では、3物質群が国際的にPOPsとして位置付けられ、EUもPOPs規則の附属書Iに追加する具体的な法令案を提示し、パブリックコンサルテーション段階にあります。 このため、企業にとっては以下の対応を早期に進めることが合理的と考えられます（一般的なコンプライアンス上の助言レベル）。
- 自社の原材料・中間体・最終製品におけるChlorpyrifos、MCCPs、LC‑PFCAs（C9–21）および関連化合物の使用・含有状況の把握
- 必要に応じた微量分析やサプライチェーンへの確認を通じた含有量・不純物レベルの確認
- 条約決定およびEUドラフトの内容を踏まえた代替物質・代替プロセスの検討
- 欧州委員会の「Have your say」ポータルおよびEUR‑Lex等での公式文書・最終採択状況の継続的なモニタリング
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