2025年8月11日、欧州連合官報で規則(EU)2025/1731が公布され、REACH規則(EC)No 1907/2006の附属書XVII(制限リスト)が改訂されました。今回の改訂では、18種類のCMR物質(発がん性・変異原性・生殖毒性物質)が新たに追加され、さらに1物質(クメン)には特定用途に限った適用除外が設けられています。

今回の制限は主に「一般消費者向け供給」の禁止を目的としており、業務用途については条件付きで供給が認められる場合があります。そのため、全面禁止ではなく、ラベル表示や業務用限定の明記など、適切な条件下での利用が想定されています。

 

主な改善内容

  1. 附属書XVIIに追加されたCMR物質
    • 附属書2(発がん性カテゴリー1B): ジウロン、テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)、N,N-ジメチル-p-フェニレンジアミン、4-ニトロソモルホリン、4-メチルイミダゾール(4-MEI
    • 附属書4(変異原性カテゴリー1B): ジメチルプロピルホスホネート
    • 附属書6(生殖毒性カテゴリー1B): 12物質(例:ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビスフェノールAF由来反応生成物、ジブチルすず化合物、4-MEI など)
  2. 適用除外(クメン)
    • 対象物質: クメン(CAS番号 98-82-8)
    • 除外用途: 航空機燃料(国際規格 Jet-A, Jet-A1, JP-(x) 等に準拠する場合)

 

発効時期

  • 2025年9月1日: CMRカテゴリー1B物質に関する制限が発効
  • 官報発行から20日後: その他の改訂条項およびクメンの除外条項が発効

※本改正は 欧州委員会規則 (EU) 2025/1731 として2025年8月11日に官報に掲載され、同年8月31日に施行されます。制限規定の適用開始は2025年9月1日です。これは、CLP規則の新しい分類(委任規則(EU) 2024/197)の適用開始日に合わせたものです。

 

企業への影響と必要な対応

  • 濃度基準の遵守: 混合物や製品に含まれる制限物質は、EU CLP規則(EC)No 1272/2008で定められた濃度制限値以下でなければなりません。これを超える場合、市場投入や消費者使用は禁止されます。
  • 業務用表示の義務: 特定用途向け物質を扱う場合は、包装に「業務用」と明記する必要があります。
  • 影響産業: 農薬、塗料、自動車、電子電気分野など幅広く、製品設計や調達に直接影響を及ぼす可能性があります。

 

まとめ

REACH制限リストの改訂により、EU市場ではさらに厳格な化学物質管理が求められます。企業は、

  • 対象物質の含有実態を把握するための分析
  • 規制閾値への適合確認
  • 代替物質の検討

を早期に進めることが重要です。

規制対応は単なる義務ではなく、製品の安全性と信頼性を保証し、国際市場での競争力を維持するための基盤となります。

 

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