2025年6月30日、中国工業情報化部(MIIT)は「GB 30000.30-2025 化学品分類及びラベル安全規範 第30部分:鈍感化爆発物」を正式に発表しました。この新たな国家標準は、2026年7月1日から施行されます。
背景:なぜ今「鈍感化爆発物」なのか?
中国は2011年からGHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)を導入し、さまざまな危険分類に対応する国家標準(GB 30000.2〜29)を整備してきました。
その後、国連GHS改訂6版以降で新たに定義された「鈍感化爆発物」が導入されたことを受け、中国も国際標準と足並みをそろえるためにこの新分類を採用しました。
鈍感化爆発物とは?
鈍感化爆発物とは、元々爆発性を持つ物質や混合物に抑制処理を施すことで、爆発しにくくした化学品のことです。通常の爆発物とは異なり、「爆発」区分には属さず、代わりに新たな分類基準に基づいて評価されます。
主な分類基準と判断条件
鈍感化爆発物は、発熱エネルギーや燃焼速度に応じて、4段階(区分1〜4)に分類されます。主な判断プロセスは以下の通りです:
- 区分条件
分類に当たっては、次の基準を満たす必要があります:- 爆発的用途ではない
- 全体で爆発の危険がない(試験結果に基づく)
- 燃焼速度が1200kg/min以下
- 安定化ニトロセルロースも対象
- 除外条件
以下に該当する場合は、分類対象外となります:- 爆発性物質を含まない
- 発熱分解エネルギーが300J/g未満
- 区分指標(補正燃焼速度)
区分 | 燃焼速度(Ac, kg/min.) | 危険レベル |
区分1 | 300~1200 | 高 |
区分2 | 140~300 | 中 |
区分3 | 60~140 | 低 |
区分4 | ~60 | 最低 |
GHS表示要素(ラベル情報)
それぞれの区分に応じて、ラベルに表示すべき情報(シグナルワード、危険コード、予防措置など)が以下のように定められています:
- 区分1〜2:シグナルワードは「危険」
- 区分3〜4:シグナルワードは「警告」
- 危険コード例:H206(火災や爆発の恐れ)など
- 予防措置例:P210(火気厳禁)、P280(保護具着用)など
新基準導入の意義と影響
- 空白の解消
従来の分類体系では扱いにくかった「鈍感化爆発物」という中間的な性質の化学品に、明確な定義と判断基準が与えられました。 - 安全性の向上
国際基準と整合する分類により、適切なリスク評価・ラベル表示・SDS(安全データシート)記載が可能となり、保管・輸送・使用時の事故リスクを低減します。 - コンプライアンスの促進
統一された評価基準により、企業・当局ともに検査や手続きを効率化でき、過剰な試験や手続きの削減に貢献します。 - 国際貿易の強化
国連GHSと整合することで、中国企業の輸出競争力が向上し、化学品の国際取引にも好影響を与えます。
まとめ
「GB 30000.30-2025」は、新たな危険性区分「鈍感化爆発物」の導入により、化学品の分類と安全管理の精度を高めることを目的とした重要な国家標準です。関連するメーカーや輸出企業は、新基準への適合に向けて、ラベル・SDSの更新や技術資料の整備が不可欠となります。
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