EUでは、医療機器の化学物質安全性と持続可能性への規制強化が進んでいます。REACH規則は、医療機器メーカーや輸入業者にとって無視できないコンプライアンス要件となっています。

 

医療機器とREACH規則の関係

EUの医療機器市場は1,300億ユーロを超え、ペースメーカーから注射器まで50万種以上の製品が存在します。これらはプラスチック、金属、電子部品など多様な素材で構成され、REACH規則(登録・評価・認可・制限)が大きな影響を及ぼします。

 

医療機器のリスク分類(EU MDRに基づく)

  • クラスI(低リスク):包帯、手袋など
  • クラスIIa/IIb(中~高リスク):注射器、カテーテルなど
  • クラスIII(高リスク):心臓ペースメーカーなど

 

なぜ化学物質の安全性が重要なのか?

医療機器には、可塑剤、滅菌剤、重金属など有害な化学物質が含まれることがあります。特に体内に埋め込まれる機器では、材料の劣化による化学物質の放出が問題となります。

 

REACH規則で求められる対応

REACHでは、製品の形状や用途によって「物質」「混合物」「成形品」に分類し、それぞれ異なる義務が課せられます。

主要なコンプライアンス項目:

項目 対象 概要
登録 年1トン以上の輸入/製造物質 情報提出が必要
認可 特定の有害物質(附属書XIV) 使用には認可取得が必要
制限 附属書XVII対象物質 使用が禁止・制限される場合あり
SVHC届出 高懸念物質含有品(0.1%以上 ECHAへの届出が必要
SCIP届出 廃棄物情報の登録 市場販売には必須

 

製品タイプごとのREACH対応

シンプルな医療物品(器具・装置)

例:手術器具、カテーテル、ペースメーカーなど

→「成形品」として扱われ、以下が求められます:

  • SVHC・SCIP届出
  • 意図的放出がある場合の登録義務
  • 原料に認可対象物質を使う場合は認可申請
  • 制限物質の使用制限
  • ニッケル放出基準(0.5μg/cm²/週 以下)

 

医療用試薬・混合物

例:潤滑剤、歯科用充填材、骨セメントなど

→「混合物」として扱われ、以下が求められます:

  • 物質登録(1トン以上)
  • 必要に応じて認可・制限対応

 

医療物品+試薬の複合製品

例:試薬内蔵型の検査機器(PCR装置など)

→成形品と混合物の両方のREACH要件を満たす必要あり

 

チェックリスト(種類別義務の一覧)

種類 SVHC届出 SCIP届出 登録 認可 制限
医療物品
医療試薬    
複合製品  

 

 

まとめ

REACHは、製造・輸入業者に対し、製品に含まれる化学物質の把握と管理責任を課しています。特に医療機器業界では以下の対応が急務です:

  • SVHC候補リスト・認可・制限リストの定期確認
  • SCIP・ECHA登録システムへの対応
  • 代替材料の研究開発

安全で信頼性のある製品の提供が求められる今、REACH対応は競争力を高める要素でもあります。

 

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