2024年6月4日、英国政府はPFAS(パーフルオロ化合物類)のリスク管理において、「PMT(残留性・移動性・毒性)」の概念を正式に採用すると発表しました。この新方針は、環境中でのPFASの長期リスクに対応するための重要な一歩です。

 

PFASとは?なぜ問題視されているのか

PFASは、非常に安定性が高く、工業製品から日用品まで幅広く使用されてきました。しかしその分解されにくさが、環境中への長期残留を引き起こしており、規制が求められてきました。

さらに、環境中での移動性が高いため、排出源から遠く離れた場所でも検出されるケースが増えています。英国の調査では、2021年に採取された地下水や地表水サンプルの多くからPFASが検出されており、魚類や飲料水を通じて人への健康リスクが懸念されています。

 

従来の「PBT」概念では不十分?

これまでは、PBT(残留性・移動性・毒性)概念をベースにリスク管理が行われてきました。しかし、PFASの中には生物蓄積性は低いが移動性が極めて高いものがあり、PBT概念だけではリスクを十分に把握できない可能性があります。

そのため、より包括的にリスクを管理するために新たなPMT概念が必要とされてきました。

 

PMT概念とは?その特徴と背景

PMTは、以下の2つの特性に基づく分類概念です:

  • PMT:残留性・移動性・毒性をすべて持つ物質

  • vPvM:極めて高い残留性と移動性を持つが、毒性の有無は不問

この分類により、水環境や広域環境への長期的リスクを引き起こす物質を早期に特定し、対策を講じることが可能になります。

ただし、現時点では国際的な統一基準は未整備であり、EUではCLP規則内で認識基準が策定されていますが、REACH規則ではまだ採用されていません。

 

英国REACHにおけるPMT概念の活用と今後の展望

英国ではPMT概念を、REACH規則のPFAS対策における優先順位付けの指針として活用。これにより、以下のような行動が進められています:

  • PFAS規制ファイルの作成に活用

  • 健康・環境リスクの評価ツールとして機能

  • 持続不可能な汚染の未然防止

今後はPFASに限らず、より多くの物質にこの概念が適用されていくと予想されます。また、英国は国際的なPMT基準の議論にも積極的に参加し、将来的にCLP規則などに取り込むことも視野に入れています。

 

まとめ

PMT概念は、水環境を含む環境への長期的なリスクを予防的に管理するための新しい枠組みです。英国政府はこの新方針を通じて、後手の対応ではなく、発生源の段階での規制強化を進める姿勢を明確にしています。

これは、水資源の保護や環境持続性の観点から極めて重要な政策転換と言えるでしょう。

 

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