中国は電気電子製品中の有害物質管理について、強制国家標準『GB 26572-2025』を2025年8月1日に公布し、2027年8月1日から施行します。本標準はGB/T 26572-2011(推奨)を置き換え、表示要件を定めるSJ/T 11364-2024(2025/4/1施行)の内容とも整合します。主要なポイントは以下のとおりです。
主な変更点
- 有害物質が10種に拡大:従来の6物質に加え、以下の4種類のフタル酸エステル類が新たに追加されました(上限は全て0.1%):
番号 | 略称 | 物質名 | CAS番号 |
7 | DBP | フタル酸ジ-n-ブチル | 84-74-2 |
8 | DIBP | フタル酸ジイソブチル | 84-69-5 |
9 | BBP | フタル酸ブチルベンジル | 85-68-7 |
10 | DEHP | フタル酸ジ-2-エチルヘキシル | 117-81-7 |
- 製品カテゴリ別の適用管理:製品は以下の2つに分類されます
- カテゴリーI(合格評定目録に収載):条5(濃度上限)+条6(表示)に法的に適合義務
- カテゴリーII(目録非収載):条6(表示)は義務、条5(濃度上限)は“奨励(努力)義務”。将来の目録改訂によりIへ移る可能性あり
- カテゴリーI(合格評定目録に収載):条5(濃度上限)+条6(表示)に法的に適合義務
- 試験方法と判定ルールの統一:
- GB/T 39560シリーズ(IEC 62321)に準拠した分析法を標準化
- 六価クロム(Cr6+)の判断基準も調整
- ラベル表示と適合性文書の厳格化:
- QRコードや画面表示など、デジタルラベルが導入
- 製品のリスク部品をカバーする試験報告書を適合宣言文書に含めることが必須に
移行スケジュールと猶予措置
- 公布:2025年8月1日/施行:2027年8月1日
- 施行日前に生産・輸入された製品は、施行後13ヶ月を経過した時点から新要件の適合が必要(移行措置)
分析業務に関わる企業へのアドバイス
この改正で、製品中の化学物質の正確な定量分析がこれまで以上に求められます。企業の皆様には、以下の準備を推奨します:
- 材料スクリーニングと試験強化(特にプラスチック、塗料、接着剤等に含まれるフタル酸エステル類の確認が必須)
- 代替素材・技術の早期検討(フタル酸エステルの代替品選定や、製造工程の見直しを進めましょう)
- 技術文書と証明書の整備(抜き打ち検査に備え、試験報告書や適合性評価文書を最低3年間保存)
→分析データの正確性と再現性が企業評価の鍵になります
まとめ
「GB 26572-2025」は、単なる規制対応にとどまらず、製品設計から使用・廃棄に至るまでの有害物質管理の強化を求める転換点です。
企業にとっては、早期の対応と確実な分析・文書管理がコンプライアンスの鍵となり、中国市場での持続的なビジネス展開に直結します。
今から動けば、十分な準備期間があります。法施行までに、確実な適合体制を築いていきましょう。
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