2026年4月27日、欧州委員会のジェシカ・ロスウォール委員(環境担当)は、欧州議会のENVI委員会において、長らく検討されてきたREACH規則の包括的改正(通称:REACH 2.0)を現時点で見送ることを明らかにしました。
約6年前から準備が進められ、ポリマーの登録義務化や登録情報の有効期限設定などが盛り込まれる予定だった大規模な改革案は事実上棚上げされ、欧州の化学業界は一時的な「規制の猶予」を得ることとなりました。
決断に至った経緯
1.改正見送りの背景
今回の決定には、欧州の化学産業を取り巻く厳しい経済・地政学的状況が影響しています。
- 産業界の強い懸念:ドイツ化学工業協会(VCI)をはじめとする業界団体が、高エネルギーコストに苦しむ現状でのさらなる規制強化に強く反対し、「競争力維持のための呼吸の場」を求めていました。
- 影響評価の不備:欧州委員会の規制精査委員会(RSB)が、改正案の影響評価に対して否定的な意見を出しており、法案提出に向けた十分なコンプライアンスが整わなかったことも要因の一つです。
2.今後の規制の方向性
包括的な改正は見送られたものの、欧州委員会は以下の「簡素化と近代化」を通じて化学物質管理を継続する方針を示しています。
- 現行規定の最適化: 抜本的な法改正ではなく、技術的な附属書の調整などを通じて管理を強化します。
- 法執行(エンフォースメント)の強化: 市場監視や税関でのチェックを厳格化し、非適合製品の排除に注力します。
- 個別物質の規制加速: PFAS(有機フッ素化合物)の制限案については、引き続き年内の公表を目指して作業が加速される見通しです。
3.実務への影響
当初懸念されていた「ポリマーの全面登録」や「10年ごとの登録更新」といった破壊的な変更は、当面回避されることになります。しかし、現行の登録データの質に対する審査(評価プロセス)は今後さらに厳しくなることが予想されます。
まとめ
REACH 2.0の包括的な改正が見送りとなったことは、欧州に輸出を行う企業にとって、短期的には規制対応の不確実性が取り除かれた朗報と言えます。しかし、欧州委員会は「規制の撤回」ではなく「簡素化と執行強化」へ舵を切ったに過ぎません。
事業者は、大規模な法改正がないからといって安堵するのではなく、既存の登録データの完全性の維持、および継続的に進められるPFAS制限などの「個別物質の動向」にリソースを集中させることが推奨されます。特に市場監視の強化により、SDSの不備や非適合製品への取り締まりが厳しくなる点には引き続き十分な注意が必要です。
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