新設された危険有害性クラスと要求事項
従来のCMR(発がん性・変異原性・生殖毒性)物質に加え、以下の新たなハザードクラスに対する分類・表示が適用されます。
内分泌かく乱性(ED:Endocrine Disruptors):
ヒト健康に対する内分泌かく乱(ED HH 区分1・区分2)
環境に対する内分泌かく乱(ED ENV 区分1・区分2)
難分解性・蓄積性および易移動性物質:
PBT(難分解性・生体蓄積性・毒性)/vPvB(極めて難分解・極めて高蓄積)
PMT(難分解性・易移動性・毒性)/vPvM(極めて難分解・極めて高移動性)
ラベル表示およびEUHフレーズの義務化: 該当物質には、指定のEUHステートメント(例:EUH380「ヒトに対して内分泌かく乱を引き起こすおそれ」、EUH440「PBT物質を蓄積」等)のラベル貼付およびSDSセクションへの反映が義務付けられます。
サプライチェーンおよび混合物・成形品へのインパクト
本規則は、単一の化学物質だけでなく、調合品(混合物)や川下の製品にも広く影響します。
混合物の含有限界値(GCL)による連動: 対象成分を一定の閾値(0.1%以上等)含有する塗料、インク、接着剤、洗浄剤、樹脂コンパウンドなどの混合物は、製品全体として該当ハザードの分類・ラベル表示が義務付けられます。
REACH規則(SVHC・制限)への波及: 新ハザードに分類された物質は、REACH規則に基づく高懸念物質(SVHC)への収載や、消費者向け製品における使用制限(Annex XVII)の対象となるリスクが急激に高まります。
欧州向け輸出企業に求められる実務対応
EU向けに化学品、電子部材、プラスチック材料、日用品等を輸出する日本企業は、以下の対策を早期に進める必要があります。
製品・原料中の対象物質スクリーニング分析: 自社製品の可塑剤、難燃剤、界面活性剤、フッ素系材料等の中に、EDやPBT/PMTに該当する物質が微量不純物として含まれていないか、LC-MS/MSやGC-MSによる高感度機器分析を行う。
欧州向けSDSおよびラベルの全面更新: 最新のCLP規則要求に準拠し、新設されたEUHフレーズやハザード区分を正確に反映した欧州向け多言語SDSを作成・配備する。
代替材料への切り替え・評価: 分類対象となる懸念物質を特定した場合、EUでの市場競争力を維持するために早期に代替化評価に着手する。
まとめ
EU CLP規則における内分泌かく乱物質(ED)やPBT/PMT等の新ハザードクラスの本格運用は、欧州の化学物質管理が「危険性の高い物質の流通を徹底的に遮断する」新たなステージに入ったことを示しています。
特に混合物における微量含有の有無や不純物プロファイルの判定には、客観的な精密化学分析による成分定量データが不可欠です。欧州市場へ製品、材料、各種部材を出荷しているメーカーや商社は、自社製品の精密スクリーニングと最新CLP規則への適合点検を早急に進めることが推奨されます。
