ドラフト案における主な改訂ハイライト
物理化学的危険性の基準明確化: 引火性液体、エアゾール製品、複合的な物理ハザードの組み合わせ判定基準が整理されたほか、生殖細胞変異原性等の健康有害性評価における非動物試験アプローチの取り込みが検討されています。
水反応性・自然発火性化学物質に対するPコードの刷新: 水と接触して引火性・有毒ガスを発生する物質や自然発火性物質について、従来の「水で直ちに洗い流す」という画一的な応急処置ではかえって危険(発火・激しい反応)を招くケースがあったため、状態に応じた実践的な手順が新設されました。
液体の場合(Liquids only):
新設コード P302+P343:「皮膚に付着した場合:直ちに余剰の化学物質を吸い取り(拭き取り)、冷水に浸すこと」。
SDS記載要件: メーカーや供給者は、拭き取りに使用すべき吸収材の材質(吸着キット、綿布、ウエス、ペーパータオル等)をSDSまたは補足安全情報に具体的に明記しなければなりません。
固体の場合(Solids only):
P302+P335+P339:「皮膚に付着した場合:直ちに付着した粒子を払い落とし、冷水に浸すこと」。
自然発火性固体(区分1)については、粒子を払い落とした後に「冷水に浸すか、濡れた包帯で覆う」処置(P302+P335+P334)へと改訂されます。
今後の国際展開と企業に求められる実務対応
国連GHSの改訂内容は、その後、欧州(CLP規則のATP)、米国(OSHA HCS)、日本(JIS Z 7252 / 7253)、中国(GB国家標準)などの各国法令・国家規格へ順次ローカル法制化されていきます。
物理的危険性試験(GHS物性試験)データの再点検: 引火点、燃焼性、自己反応性、水反応性などの物性データが正確に測定されているか、既存の試験結果や分類根拠を再検証する。
応急処置情報およびSDS記載内容の見直し準備: 特に水反応性原料や有機金属化合物、引火性特殊溶剤を取り扱う企業は、将来的な改訂を見据え、作業現場や顧客向けSDSにおける拭き取り資材の選定や応急措置手順の精査を進める。
まとめ
国連GHS改訂第12版(Rev. 12)のドラフト公表は、化学品の危険有害性伝達が「形式的な表示」から「実際の現場安全性に即した精緻なハザード伝達」へと進化していることを示しています。
特に物理的危険性の正確な判定や、水反応性・自然発火性物質の精密な性状評価には、信頼性の高い客観的な化学分析・物理危険性試験データが不可欠です。グローバルに化学品、電子材料、特殊コーティング剤、原料を出荷しているメーカーや商社は、早期に自社製品のGHS分類根拠とSDS記載内容の総点検を進めることが強く推奨されます。
