シンガポール国家環境庁(NEA)は、最近2件の告示を発表し、新たに5種類の有害化学物質と9種類の水銀使用製品に関する規制措置を明確化しました。これらの対応は、環境および人の健康への悪影響を防止する目的で講じられたものであり、シンガポールが「ストックホルム条約」(POPs条約)「ロッテルダム条約」(PIC条約)「水俣条約」(Minamata Convention on Mercury)に基づく国際的な義務を着実に履行していく姿勢を示しています。

 

対象となる化学物質と関連条約

化学物質名 関連する国際条約
長鎖パーフルオロカルボン酸(LC-PFCAs)およびその塩類・関連化合物 ストックホルム条約
中鎖塩素化パラフィン(MCCPs)
クロルピリホス(Chlorpyrifos)
カルボスルファン(Carbosulfan) ロッテルダム条約
フェンチオン(Fenthion)
水銀を含む9種類の製品 水俣条約

 

LC-PFCAsおよびMCCPs:有害物質として新たに指定

2025年1月31日、シンガポールでは「環境保護管理法」(EPMA)およびその下位規則「環境保護管理(有害物質)規則」(EPM(HS) Regs)が改正され、LC-PFCAsおよびMCCPsが「有害物質」として正式に指定されました。

これに伴い、以下の活動に対して新たな許可制度が導入されます(免除措置はなし):

対象化学物質 規制対象活動 許可制度

•長鎖パーフルオロカルボン酸(LC-PFCAs)及びその塩類・関連化合物

•中鎖塩素化パラフィン(MCCPs)

製造、輸入、輸出、販売、商業的保有 有害物質ライセンス (Hazardous Substance License)
保管、使用 有害物質許可証 (Hazardous Substance Permit)
輸送 有害物質輸送許可(Hazardous Substances Transport Approval) (輸送量にかかわらず)

これらの規制は2025年8月1日より施行され、当該物質を含む製品や混合物についても対象となります。NEAは業界に対して段階的な廃止の検討を求めており、代替手段がない場合に限り、評価後の限定的な免除を認める可能性があります。

 

クロルピリホスの規制強化

クロルピリホスは、すでに「殺虫剤として使用される有機リン化合物」として「環境保護管理法」(EPMA)附則2に分類され、許可制のもとで規制されています。一部の濃度や製剤形態に対しては免除措置が設けられていますが、NEAは2025年4月28日付で、すべての濃度およびすべての製剤形式を規制対象とする改正案をWTOに通知しました。

また、同年のCOP12/MOP2会議では、クロルピリホスをPOPsとして追加し、国際的な廃止の方針が示されました。NEAは2026年第1四半期を目途に、現行の免除をすべて廃止し、全面的な規制を開始する予定です。

 

9種類の水銀使用製品:2025年8月からの輸入・製造禁止

以下の9製品は水俣条約附属書Aに指定されており、2024年末までの段階的廃止が義務づけられています:

  1.  一体型コンパクト蛍光灯(CFLi)のうち、一般照明用で30ワット以下かつ水銀含有量が5mg/本以下のもの
  2.  電子ディスプレイ用の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)及び外部電極 蛍光ランプ(EEFL)
  3.  体積描記計測器に使用されるひずみゲージ
  4.  溶融圧力センサー、トランスミッター、インジケーター(適切な水銀代替品が入手できず、かつ大型機器に組み込まれているまたは高精度測定に使用される電気・電子計測機器を除く)
  5.  水銀真空ポンプ
  6.  タイヤバランサーおよびホイールバランスウェイト
  7.  写真フィルムおよび印画紙
  8.  人工衛星および宇宙機器の推進剤
  9.  水銀使用量が1つあたり最大20ミリグラムの高精度コンデンサおよび損失測定用電気ブリッジ、ならびに監視機器に使用される高周波(RF)スイッチおよびリレー(研究開発用途は除く)

これらの製品について、2025年8月1日以降、シンガポール国内での輸入・製造・輸出が禁止されます。ただし、施行日前に輸入された在庫は、在庫限りでの販売・使用が認められます。

 

カルボスルファンおよびフェンチオン:PIC手続きが必要に

COP12会議では、カルボスルファンおよびフェンチオン(有効成分640g/L以上のULV製剤)が「ロッテルダム条約」附属書IIIに追加されました。これにより、2025年10月22日以降、これらの輸入・輸出に際して事前情報同意(PIC)手続きが必要となります。

輸出業者は、輸出予定日の少なくとも1か月前までに、NEA(化学品管理部:CCMD)に化学品名・SDS・用途・輸入者情報などを提出し、すべての輸出について事前承認を取得する必要があります。

 

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