2003年2月13日にEU(欧州連合)15カ国が発効したRoHS指令。2006年にはEC加盟国で施行がはじまり、ここでは6物質が規制対象となりました。その後、2015年にはさらに4物質が追加され、現在は合計10物質が規制対象となっています。こちらでは、それぞれの物質の概要や特徴を解説します。

RoHS指令により分析が必要となる6つの規制物質

まずは2006年7月1日から規制がはじまった6物質それぞれの特徴についてお伝えします。

カドミウム(Cd)

工業全般で用いられてきたカドミウムは微量であっても過剰曝露が起こる危険性をはらんでおり、骨折や腎障害にも結びつくカドミウム中毒を引き起こします。また、IARCの報告では発がん性に対する指摘もなされました。日本におけるカドミウムが引き起こした問題としては、「イタイイタイ病」が有名です。

■RoHS指令による限界値(閾値):0.01%(100ppm)以下

鉛(Pb)

含有率を高めることで加工性の向上に期待できる鉛。ただし毒性についても知られており、体内へ過剰に取り込まれた場合「鉛中毒」を引き起こすと指摘されています。この症状は酵素の働きを阻害するもので、典型的な症例として貧血が見られます。その他、小児・胎児の場合は脳や身体の成長に悪影響が与えられるリスクが研究によって報告されています。

■RoHS指令による限界値(閾値):0.1%(1,000ppm)以下

水銀(Hg)

日本においてもっとも大きなインパクトを残したのは「水俣病」。社会問題ともなった水銀による公害です。中枢神経や内分泌器、肝臓の器官への障害や口腔内、脳等に与える有機水銀の毒性は非常に強く、これらは水銀中毒という名称で知られています。なおRoHS指令では。水俣病に類似した公害発生を防止する取り組みである水俣条約との関連も言及されています。

■RoHS指令による限界値(閾値):0.1%(1,000ppm)以下

六価クロム(Cr)

鋼の耐食性向上のために使用されることも多い六価クロム。三価クロムや金属クロムとは異なり強い毒性を持ち、「六価クロム中毒」になると鼻中隔穿孔や癌、皮膚・気道障害などの症状を引き起こすリスクがあります。RoHS指令以外にも、環境基本法や水質汚濁防止法、土壌汚染対策法、労働安全衛生法などによって厳しい基準値が設けられています。

■RoHS指令による限界値(閾値):0.1%(1,000ppm)以下

ポリ臭化ビフェニル(PBB)

樹脂成型における難燃剤として用いられていたポリ臭化ビフェニルは、ポリ臭化ジフェニルエーテルよりも高い毒性を持つ化合物です。健康に対する影響の幅は広く、皮膚や肝機能、甲状腺、生殖器などにまたがる他、精神疾患や発がん性、ポルフィリン代謝異常などが報告されています。なお、現在では使用される機会はほとんどありません。

■RoHS指令による限界値(閾値):0.1%(1,000ppm)以下

ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)

ポリ臭化ビフェニル同様、難燃剤として用いられてきたポリ臭化ジフェニルエーテル。毒性こそポリ臭化ビフェニルと比較して低いものの、生物累積性の高さが問題点としてあげられています。ラットに対して行われた実験では、ペンタBDE・オクタBDE・デカBDEの3種類のポリ臭化ジフェニルエーテルを投入したところ、神経発育に重要な甲状腺ホルモンの血中濃度を低下させることが報告されています。

■RoHS指令による限界値(閾値):0.1%(1,000ppm)以下

RoHS2.0の規制物質が10 物質に

2015年6月4日には、以下の4物質が規制物質として追加されました。含有規制は19年7月22日に開始されます。

  • フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)
  • フタル酸ブチルベンジル(BBP)
  • フタル酸ジブチル(DBP)
  • フタル酸ジイソブチル(DIBP)

上記はフタル酸エステル類と呼ばれる化合物で、プラスチックの可塑剤としてよく登場します。なお、毒性については各機関が研究を進めており、生殖毒性についての毒性評価が報告されています。なお、一部のフタル酸エステル類については発がん性の懸念も指摘されています。

■RoHS指令による限界値(閾値):0.1%(1,000ppm)以下

ディファレントのRoHS分析

ディファレントでは、正確な測定・校正結果の能力を認められたISO/IEC17025の認定を受けた試験所と協力し、RoHS指定における規制物質の製品混入測定を手掛けております。ご用意しているRoHS分析のメニューは以下です。

  • RoHS6(RoHS6物質)
  • RoHS2.0(RoHS10物質)
  • RoHS追加フタル酸4物質
  • 精密分析(ICP分析)
  • RoHS簡易分析

RoHS分析は、EC地域への製品輸出をご検討中の企業さまや、対外的な環境配慮のアピールによるブランディング向上を目指す企業さまにとって有効な施策です。特に、家電製品、通信機器、民生用機器、照明機器、電動・電子工具、玩具・レジャー・スポーツ機器、自動販売機の製造業者はECにおいてRoHS指定の適用対象となるため、ぜひ当社までRoHS分析をご依頼ください。